予防接種とは
当クリニックでは予防接種を行っています。そもそも予防接種とはワクチン接種のことで、ワクチンには、ある特定の感染症の病原体(細菌・ウイルス など)を無力化したもの(不活化ワクチン)、病原性をできるだけ弱めたもの(生ワクチン)、もしくは、最近では新型コロナワクチンに代表されるように、ウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報の一部を注射して、それに対する免疫を獲得するもの(mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチン)があります。これを体内に接種していくことで、その病気に対する免疫がつけられるようになります。それによって、次にその病原体が体内に侵入したとしても発症しにくくなるか、発症しても重篤なリスクを避けられるようになるというものです。
このように予防接種は、個人の身を守るといったことで行うほか、予防接種を受けることができない方々にもできるだけ感染させない、つまり流行を防ぐという公衆衛生上の目的もあります。
なお当クリニックでは、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンをはじめ各種の接種を行っています。ワクチン接種を希望される場合は、個別にお問い合わせください。
インフルエンザワクチン
インフルエンザを予防するうえで、最も効果的な対策と言われているのがインフルエンザワクチンです。13歳未満は接種回数が計2回(2回目を受ける際は1回目の接種から2~4週間空けます)、13歳以上から1回となります。
なおインフルエンザのウイルスというのは、毎年違うタイプの型が流行するほか、1回の注射による持続有効期間は約5ヵ月間とされているので、毎回予防したいという場合は年1回の間隔で接種する必要があります。また接種をより有効にするためには接種時期もしっかり考慮する必要があります。日本では例年12月~翌3月にインフルエンザは流行するのですが、接種してから効力を発揮するまで、2週間程度かかります。そのため流行のピークとなる1月を迎える前、12月中旬までに接種することをお勧めします。
なお、同ワクチンの接種というのは毎年10月から行われるものですが、藤沢市では、主に高齢者を対象としたインフルエンザ予防接種に関して、費用の一部を助成しています。詳細につきましては、藤沢市の公式ホームページをご覧ください。
藤沢市の「高齢者のインフルエンザ予防接種」は→こちら
肺炎球菌ワクチン
肺炎の原因となる病原体(細菌、ウイルス など)は様々ありますが、原因として一番多いのが肺炎球菌です(全体の3割程度)。また肺炎球菌が原因の肺炎については、免疫が未発達の小児や何らかの基礎疾患をお持ちの方、加齢によって免疫力が低下している高齢者が重症化しやすいです。この肺炎という病気は、日本人の死因の第5位に挙げられているのですが、死亡した方の95%以上が65歳以上の方ということもあって、高齢者の肺炎球菌ワクチン接種は、定期接種扱いとなっています。したがって、各自治体で接種費用の一部を助成しています。ちなみに全ての高齢者が定期接種の対象にはなりません。詳細につきましては、藤沢市の公式ホームページをご覧ください。
なお、高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種の対象とならない方であっても接種自体は可能です(全額自己負担になります)。ただし、再接種を希望される方につきましては、前回の接種から5年以内に受けるとなると接種部位から非常に強い痛みが現れるようになりますので、注意が必要です。
藤沢市の「高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種について」は→こちら
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹とは、これまでに水ぼうそうに罹患したことがある方のみに発症します。実は、水ぼうそうの原因である水痘帯状疱疹ウイルスというのは、水疱などの皮膚症状が治まった後も神経節に潜伏し続けています。その後、加齢をはじめ、過労やストレスで免疫力が低下するようになると同ウイルスは活性化し、左右どちらか片側の神経に沿って、チクチク、ピリピリした痛みと皮膚症状(紅斑、水疱 など)がみられるというもので、これらは2~3週間程度の期間で治まると言われています。
ただ、高齢者や帯状疱疹の症状が重かったという場合、皮膚症状が解消された後も神経の痛みが残ることがあります。発症から3ヵ月が経過しても痛みが残っていると帯状疱疹後神経痛と診断されます。痛みの現れ方というのは人それぞれですが、日常生活に支障をきたすようになることもあります。
このような状態(帯状疱疹後神経痛)にならないためにも、あらかじめ予防しようというのが帯状疱疹ワクチンの接種です。ただし、同ワクチンは任意接種(全額自己負担)で、50歳以上の方を対象としています。帯状疱疹は、年をとればとるほど発症率は上がってきますし、帯状疱疹後神経痛にかかると、長い間痛みに悩まされることになるので、50歳を過ぎたという方で水ぼうそうに罹患したことのある方は、接種されることをお勧めします。
MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)
MRワクチンは、麻疹・風疹混合ワクチンとも呼ばれています。つまり、麻疹(はしか)と風疹の両方の感染症の発症を予防するワクチンです。そもそもMRワクチンは、小児の定期接種で、1歳を過ぎてから2歳の誕生日までに1回、小学校に入学する前の直近1年の間に1回の計2回の接種が必要とされています(MRワクチンは、小児定期接種の推奨期間内に接種することができれば無料です)。
ただ上記のような2回の接種となったのは、2000年4月2日以降に生まれた世代の方で、それ以前に生まれた方というのは、1回接種、もしくは1回も受けてないという世代の方もいます。そのため、これらの病気に関する免疫が弱い、あるいは全くないということも考えられます。
成人がこれらに罹患されると重症化することもありますし、妊娠初期の女性が風疹を発症すると母子感染から、生まれてくる赤ちゃんが先天風疹症候群(難聴、白内障、先天性心疾患 など)という障害をもつリスクも高まります。ちなみに妊娠中は同ワクチンを接種することはできませんので、将来的にお子さんを授かりたいと考えている女性、妊娠女性と同居している方で、風疹に対する免疫が弱いもしくは、免疫がないという場合は同ワクチンを接種されるようにしてください。
なお藤沢市では、MRワクチン(風疹ワクチンを含む)の接種を希望する方に対して、一部費用を助成しています。詳細につきましては、藤沢市の公式ホームページをご覧ください。
藤沢市の「風しんワクチン予防接種費用の一部助成について」は→こちら
おたふくかぜ生ワクチン
正式な疾患名は、流行性耳下腺炎で、ムンプスウイルスに感染することで発症します。感染経路は飛沫感染や接触感染と言われています。感染しても症状が現れないという方もいます(全体の3割程度)。発症すると耳下腺(耳の下にある唾液腺)や顎下腺(顎の下にある唾液腺)などが腫れ、痛みや発熱も伴うようになりますが、その腫れ方というのがおたふく顔に似ていることから、一般的には、おたふくかぜと呼ばれるようになりました。小児に発症することが多く、早い場合は1歳を過ぎた頃に感染しますが、幼児や学童期によく見受けられます。
多くの場合、発症してもそれほど重くはないと言われていますが、思春期に感染すると精巣炎や卵巣縁を併発する可能性があります。また稀とはされていますが、無菌性髄膜炎や難聴といった重篤な合併症を発症することもあります。
このようなリスクをできるだけ減らすには、おたふくかぜ生ワクチンを接種されるようにしてください。ただこの場合は、任意接種となりますので、全額自己負担とはなります。ちなみに生ワクチンとは、病原体(ウイルス)の病原性を極限まで弱めたものです。
なお同ワクチンにも接種推奨期間があって、1歳を過ぎた頃にまず1回接種します。その後、さらに免疫力を強くしたい場合は、小学校へ入学する前の直近1年の間にさらに1回受けられるようにしてください。
A型肝炎ワクチン
肝炎とは肝臓に炎症が起きる病気ですが、その原因として最も多いのがウイルスによるウイルス性肝炎です。ただ一口にウイルスと言いましてもA~E型まで5種類あるとされ、A型ウイルスによる肝炎の感染を予防するワクチンがA型肝炎ワクチンです。経口感染(同ウイルスに感染した食物を口にする など)や性的な接触による感染が挙げられます。
感染すると2週間~1ヵ月半程度の潜伏期間を経て、発熱、食欲不振、倦怠感、黄疸などの症状がみられます。乳幼児で感染する場合は軽度で済むことが多いですが、ある程度年をとってから感染すると劇症肝炎となって生命に影響することもあります。
A型肝炎ワクチンは、衛生状態があまりよくないとされる国に渡航、あるいは家族(パートナー)が感染しているという場合に接種することが多いですが、接種すること自体は1歳から可能です(任意接種なので全額自己負担です)。接種回数は計3回、接種量は0.5mlずつとなります。接種間隔ですが、1回目を終えたら、2~4週間の間隔を空けて、2回目を打ちます。そして2回目から3回目の接種の間隔は半年程度空けて接種となります。
B型肝炎ワクチン
B型肝炎は、B型ウイルスに感染することで発症する肝炎になります。急性と慢性に分けられますが、感染経路としては、感染者との性行為や注射針の使い回し、輸血、母子感染(慢性が多い)などが原因とされています。
主な症状ですが、急性B型肝炎の場合は、発熱(微熱程度)、全身の倦怠感、食欲不振、黄疸などがみられますが、症状が現れないこともあります。また慢性B型肝炎は、母子感染のケースが多く、自覚症状が現れにくいです。ただこの状態を放置すれば、成人になってから肝がんや肝硬変といった病気を発症するリスクが高くなります。なお成人を過ぎてから初めてB型肝炎を発症したという場合は、大半の方は治癒するとされ、一部の方が慢性化することもあると言われています。
急性にしても慢性にしてもB型肝炎の発症リスクを低減させるには、B型肝炎ワクチンの接種が有効です。現在は小児の定期接種になっていますが、このような状態になったのは2016年10月1日からで、接種推奨期間ですが、0歳児の間に計3回接種するとされます(生後2カ月目に1回目、その後4週間の間隔を開けて2回目、さらに5~6ヵ月を空けてから3回目となります)。なお母体がB型肝炎キャリアであることが妊娠中に確認されると、B型肝炎の予防対策として、赤ちゃんが生まれて12時間以内に1回目を接種し、さらに生後1ヵ月と生後半年にそれぞれ1回ずつの計3回の接種が必要です。このワクチンを接種することで、母子感染の確率を下げることができるようになります。ちなみにこの場合は定期接種ではなく、保険適用の扱いとなります。
また2016年10月1日以前は、小児の任意接種だったこともあるので、受けていないという方もいるかもしれません。なお成人を過ぎてから接種を希望される場合も、小児の定期接種の場合と同様に計3回の接種が必要となります。
子宮頸がんワクチン
主に子宮頸がんを予防するためのワクチンで、小児の定期接種のひとつでもあります。これは中学1年生の女子を対象としていて、この1年の間に計3回の接種が推奨されています。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因とされていますが、一度でも性行為をすれば誰でも発症するリスクはあります。ただ多くの場合、同ウイルスは自然に排除されるのですが、稀に排除されずに長い間に渡って感染が続き、やがて子宮頸がんを発症することもあります。このリスクを可能な限り避けるようにするために接種するのが子宮頸がんワクチン(HPVワクチンとも呼ばれます)です。
ただ、同ワクチンは因果関係が現時点ではっきりしていませんが、接種後にみられる多様な症状(めまい、歩行困難、不随意運動、記憶障害、集中力の低下 など)が日常生活に影響が及んでいるという報告もあります。そのため、現在は積極的な接種勧奨というのは、一時的ではありますが差し控えているという状況です。このようなことから、接種を希望される方は、これらを踏まえ、接種しないことで起きるとされる子宮頸がんを発症するリスク等と比較し、よく考えたうえで接種の有無を決められるようにしてください。
子宮頸がんのワクチンには、サーバリックス(2価)、ガーダシル(4価)、シルガード(9価)と主に3つの種類があるわけですが、定期接種扱いとなるのが2価と4価です。それぞれの違いですが、2価は2種類(がん化する確率が高いとされる16・18型)、4価は4種類(16・18型と尖圭コンジローマを引き起こすとされる6・11型)のHPVに対して有効なワクチンとなります。ちなみに9価は9種類(6・11・16・18・31・33・45・52・58)の型のHPVに有効とされるワクチンです。定期接種の推奨期間でない時期に同ワクチンを受けるという場合に9価はお勧めです。
なお、2価、4価ともに計3回の接種(9価も同じ)が必要となりますが、2価で2回目の接種をする場合には初回の接種から1ヵ月、3回目は初回の接種から半年後に打ちます。また4価は、初回の接種が終了してから2ヵ月後(2回目)と半年後(3回目)に打つようにします。
藤沢市の「HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種について」は→こちら